環境問題の本質

November
08
2008

 新聞の片隅に東京大学、ローソン、東電などが省エネ支援の引き換えにCO2排出権枠を得る「国内クレジット制度」を申請・・・とありました。CO2排出権とは、あらかじめ企業や自治体などに排出する権利(量)を割り振っておき、状況によってその権利を売買しながら全体の排出量をコントロールする制度です。そしてその排出権を市場で売買する取引をCO2排出権取引といって、すでにヨーロッパでは市場が形成され取引が開始されています。まず手始めは、地球温暖化対策の名目でCO2から。そして成熟してくれば他の汚染物質についても計画されているとか。世の中本当に頭のいい人が居るもので、法律とか国際条約ではなくて、こういうデリバティブを考えて市場メカニズムによって制御すればよいという発想。これは確か、電波なんかも同じような仕組みだったと思いますけど、こういう発想は見事です。でも、これじゃサブプライムモーゲージと一緒ってことですか?証券化して市場で取引する手法でしょう?それに現時点では、割り振っただけで取引しないほうがCO2排出量を抑制できるという議論もあるくらいで・・・・。

 

 これは、はっきり言ってそういう市場メカニズムが破綻してしまった以上、もう無理なんじゃないかと思います。まさか、企業間でプレミアつけて売買なんか絶対にしないと思うし、そういう証券にプレミアつけようと思ったら分散してファンドに組み入れるとか、そういうサブプライムモーゲージと同様の手法を使うしかどうにもならない!?もっと言えば、京都議定書をアメリカ、カナダは批准していないし、BRICs諸国も産油国もみんな蚊帳の外。こんな状況で市場が形成されると言うことは非常に厳しいのに決まっているし、それでは本来の目的であるCO2排出抑制効果を市場メカニズムに委ねるという効果を期待するのは到底不可能でしょう。さらに、もし、上手く市場が形成されて非常に有利な運用が可能になったとして、そのコストを負担するのは最終的には消費者なんだというところが、どうも解せないです。そうなった場合、消費者にとってこれは実質「消費税」なのだと思う。

 

 だいたい、そうやって何もかも市場取引に委ねるという発想そのものが世界的に大きく崩れてしまった現時点で、ここからそれを推進しようと言うのはどういうポリシーなのだろうか?世界的に先進国経済がマイナス成長に陥ってしまった現在、そしてCO2排出に関して省エネ技術がどんどん推進されている現時点ではどうもならないし、京都議定書の内容さえ怪しくなってきています。市場メカニズムに委ねるなら現時点は、将来性のない証券として扱われかねない状況だから、当然暴落銘柄でしょう。

 

 こうなると議論は環境問題の本質から逸脱しかねないです。まず大切なのはCO2排出が本当に地球温暖化を促進しているのかと言うことをしっかりと理論的に証明してゆくことがまず大事で、いまはその努力に傾注すべきだろうと思います。この証券の裏づけは「CO2は地球温暖化の原因である」ことなのですから。市場で取引が活発化している最中、「どうやらCO2はあまり地球温暖化とは関係ないかもしれない」という有効な論文でも発表された日には、この排出権は市場で暴落してしまう。まるで今の金融恐慌と同じになるでしょう。だから、権利の裏付をしっかりしないとどうにもなりませんよね。

 

 地球温暖化の原因がCO2であるという議論の根拠は非常に単純で、産業革命以前には大気中濃度が0.028%であったものが現時点ではおよそ0.037%であるという観測結果に基づきます。このまま行くと2050年には地球の平均気温が5℃も上昇しちゃうからヤバイという推論がこの排出権証券の担保です。これじゃ、買えないでしょう?「不都合な真実」には確かに地球温暖化の様子が描かれていますが、もしかしたらこういうことはその地域に対してはデメリットでも、メリットのある地域もあるんじゃないか?そんな議論もありますし、植物学的には現在のスピードで森林伐採が続けば、将来地球は大変なことになるから、今の時点でCO2が増えて植物生育スピードを速めることが非常に重要という議論もあります。とにかく世界中の学者がいろいろな立場で研究し、様々な論文を発表してきていて、そのバリエーションを止めることそのものが「不都合な真実」となりかねません。

 

 地球環境というのは定点観測だけで判断するのは無理だと思います。もちろん環境の変化によって現在の文化圏を侵食する恐れは確かにあるでしょう。長い地球の歴史のほんの瞬きほどの時間に、急激に近代化が推し進められた人類ですから、大きな変動、そして長い期間の変動には、なかなか対応できない部分もあるでしょう。しかし、そういう議論がエスカレートしてきて「人類の危機」というレッテルを貼ってしまうことが、この証券化された排出権の価格を引き上げるのでは、と考えることも出来なくはない。そいういう意味で、我々はこの問題に関してはもっともっと慎重であるべきなんだと思います。

 

 それよりももっと身近で怖いことは、最近議論が下火になってきた環境汚染物質の投棄や食品含有の問題でしょう。これは実害が非常にたくさん出てきていますし、何よりも直接的に私達の生命を脅かす問題です。この問題で「不都合な真実」を撮影するとしたら・・・・。それは悲惨な映像になるでしょうね。

 

 


コメント
コメントをご覧になるにはログインが必要です

Posted by 有海啓介 | この記事のURL |